“囚人のジレンマ”で説明する価格形成と崩壊

ゲーム理論で紐解く!

経済学・ゲーム理論「囚人のジレンマ」

今回のテーマ「囚人のジレンマ」は経済学・ゲーム理論のモデルの1つとして世界でも広く知られています。
ゲーム理論では交渉場で自分が得をする提案を出しても、相手に利益がなければ成立する可能性が低いという相互プレイヤーの心理に基づいています。
もちろん、相手だけが得をする提案もこちらは受容できません。
ゲーム理論はそういった意味で両者の最適解を導き出す手段の基盤として確立されています。
このモデルでは「プレイヤーが2人」かつ「相手が何を選択するかが知らされていない」という前提で論理が展開されます。

囚人のジレンマとは

・ある犯罪に関する容疑で2人の容疑者が、別々の部屋で尋問を受けている。2人は部屋が別である為、互いに意思疎通を取ることはできない。
・この2人は尋問に対し、「自白する」「黙秘する」の2つの選択が可能ですが、相互の選択によって刑罰の重さが異なります。
・1人が自白しもう片方が黙秘した場合、自白した容疑者は無罪・黙秘した容疑者は懲役8年
・2人とも自白した場合は両社とも懲役4年
・2人とも黙秘した場合は両者とも懲役2年

これを点数化して表に表すと以下のようになります。



ここで容疑者1は考えます。
容疑者2が黙秘するなら、こちらが黙秘で2年、自白したら無罪なら自白の方がいい。
容疑者2が自白したら、こちらが黙秘で8年、自白で4年だから自白の方がいい。
それならば、容疑者2が自白しようが黙秘しようが自分は自白した方がいい訳である。

そこで容疑者1は思い付きます。
容疑者2も同じことを考えるのであれば、お互いに自白し4年の懲役を受けることがベターであると。

本来互いに黙秘し合い2年の懲役を受けることがベストシナリオですが、各プレイヤーが自分にとって最も魅力的な選択肢を選んだ結果、協力した時よりも悪い結果を招いてしまう状況を「囚人のジレンマ」と呼びます。
また今回のような、両者間の心理が反映された後に選ばれる選択肢をナッシュ均衡と呼びます。
なお、今回の場合は互いに自白する行動を指します。




価格形成モデル 成長期

囚人のジレンマを市場に当てはめて考える

次は「囚人のジレンマ」のモデルを市場に当てはめて考えていきましょう。
2000年より前の市場は下記のような均衡を保っていました。



この時代の絶対的戦略は、互いが買いの戦略を取ることでした。
ここでいう互いとは市場に参入するメンバーを単純に2つに分けた場合を指します。

この時どちらかが売れば利益は先に確保できますが、それは互いにまだ買っていく利益を上回りません。
そこで双方(すべての投資家)は強調して買う方を選びました。
これは協調の買いが絶対的戦略となりそれがナッシュ均衡になったということでもあります。

その後、世界的な金融緩和が進み市場が否応なく上昇を続けると下記のような状況になりました。



この段階では既に含み益が大きく、将来得られるであろう期待利益よりも今利益を出す方が得られる効用が高くなっています。
しかし、相手に大きく利益を取られてしまう可能性を考えると、この段階でもまだ売るという戦略は出てきません。
理想的な展開は自分だけが売りで逃げられることですが、相手も同じことを想定する為現実的ではありません。
そこで今回も双方買いとなりナッシュ均衡となります。

価格形成モデル 成熟期

市場の成熟期はどうなっていくのか

今回は市場の成熟期を見ていきます。



一方が売り逃げすれば、相手に利益を取られる構図は変わりませんが、その差は小さくなりました。
それでも均衡は協調買いで一致します。
しかし前回と違う点は、双方とも売りになった場合は、損失が大きくなってしまうという点にあります。
このことからも売り逃げできればある程度の利益を確保できても、双方とも売りになった時の損失(相場の下落)が懸念となり、やはり買いを続行することとなります。

価格形成モデル 衰退期

バブル崩壊

この後はバブル崩壊のパターンとなります。
それは売り逃げが協調買いの利益を上回り、かつ残りを引き受けた買い方の利益がマイナスとなり協調売りの利益を下回ってしまう場面です。



この時、双方は相手が裏切って売り逃げる場合も相手が逃げない場合も売った方が利益がよくなるのでどちらにしても逃げるという選択を取ることになります。
今回は双方の売りがナッシュ均衡となる、まさに囚人のジレンマで紹介した最適な選択をしたが、全体の最適解(パレート最適)にはなっていないというジレンマで終了します。
ここの過程に行きつく前に、それでも両社が強制的に買い続ければ別となります。
買いの特点はさらに上昇し、だれも売らなければさらに高得点となります。

しかし、このシナリオには問題点があります。
バブルが加速することによって相手の裏切りはどのパターンのポイントより、悪いポイントになってしまうことです。
それを承知で、相手におびえながら協調の買いを続けることが生き延びる道となります。

 

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